EMIの転身とAppleの戦略
Appleの戦略が一番したたかだということか。
個人的な予想をいい意味で裏切って、NonDRMなサービスを正式発表したEMIとその席に同席したApple=Jobs。こちらにはそのあとのQ&Aも掲載されている。
記事によるとNonDRM楽曲は$1.29、その代わり256kbpsという高音質のAAC。アルバムはPremiumでも従来通り$9,99。EMIはこれを自社の保有する全楽曲に適応するという。
iTunesで販売される楽曲はこれまで通りのFairPlayを適応したモノも同時に販売され、そちらは従来通り$0,99。これまで購入したFairPlay版をPremiumにクレードアップも可能だ。
アルバムで買うならPremium版を、曲単位で買うならFairPlay版でという手もあるし、今後iPod以外のDMPに移行したければPremiumに変更してもいいだろう。
このiTSでの値付けが非常に上手い。レーベル各社はAppleに対して曲の値上げの圧力をかけていたわけだが、Premium設定を作ることで1曲あたりの単価を上げることができる。しかしその交換条件としてNonDRMを受け入れさせる。これは実に上手いやり方だ。業界最大手のEMIの楽曲がダウンロードサービスの最大手iTSでのNonDRMを開始すれば、レーベルもMSP(Music Service Provider)他社も追随するだろうことは想像に難くない。
EMIはそもそもCCCD導入の急先鋒だったわけだが、あっという間に止めて今度はこの形。非常に早い転身だなと思うのだが、実はこの会社「技術に対して抵抗がない」というだけなのかもしれない。常に新しいトレンドを受け入れていける柔らかい会社なのかも。SONYなどは未だにDRM付きのCDを売っているようだし。
そしてAppleとしてはすでに米国の7割以上をiPodで押さえてしまっているという余裕が、このNonDRM戦略をとらせる基になっている。iPodからの流出があるかも……ということは、逆に考えればWalkmanからの移行もあり得るのだ。iPodが魅力的な製品である限り、Appleの強さは変わらない。このへん、JobsはMac-Windowsのシェア争いから非常に多くのことを学んだということだろう。そして技術という土俵の上でなら、SONYやM$には決して負けないという自負。確かに他社DMPに比べてiPodは圧倒的に使いやすい。
さて問題は日本だ。欧米では5月から始まるこのPremiunダウンロード。日本ではどうなるだろうか。iTSでさえサービス開始まで2年近くかかっているのに、今度は「違法ダウンロードの温床」になりうるNonDRMサービス。既得権益を守ることだけに興味がある悪の七団体(R)がこんなサービスを受け入れるはずがない。
……いやしかしひょっとしたら、iTSからの流出組が一番期待できるのは日本かもしれないぞ。iPodを持っていて、SONYの曲もダウンロードサービスで利用したいんだけどできないって人たちが、NonDRM化でどこにでも移れるようになったら。そのとき国内で未だにSONYの曲はmoraでしか手に入らなかったら。(笑)しかもATRACで、Walkmanを使わなきゃいけないって縛りをつけたら。時代には大いに逆行(笑)しているが、そーいう戦略も取れなくはない。日本のケータイ市場のように、DMPも改めて独自化の道を進む(←バカ戦略)という手もある。
そー考えるとiTSに対してNonDRMを早くに認める可能性はなくはないはず。しかもNonDRMになるとさらにコピーし放題→私的録音補償金はやはり必要→iPod他のDMP&HDDに課金が可能!という幸せ回路爆発してくれちゃったりなんかすると最高だ。(笑)
Q&AでEMIのCEOが言った“われわれは「消費者を信用する」立場をとる”という言葉をエンドレスで聞かせてやりたいものだ。
いずれにしろ今回のこの発表で音楽業界はまた大きな舵取りを迫られることになった。しかしすでにEMIがその方向に動くのだ。他社も遠からず方針を転換してくるだろう。我々は「信用される消費者」として、音楽の正しい利用を心がけるようにしたいものだ。そう、このNonDRM化は昔から言っているように「音楽を我々の手に取り戻す」ための第一歩になりうるのだから。
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コメント
どうも、Apple-Styleから来ました。
幸せ回路爆発というフレーズがツボにはまりました。
でも、書いてある通り、そういう思考回路になっちゃったりするところが
某各種団体様の怖さなんですよね。
日本じゃ"NonDRM"はまだまだ先のことになりそうです。
それではまた!!
投稿者: cowboy_spike | 2007年04月04日 18:55
幸せ回路爆発しちゃってくれないかなぁと思う今日この頃です。
つーか、こっちも交換条件でしょう。私的録音補償金通すならDRMはすべて外せと。w
そしてさらに「私的録音補償金払ってるのに聴けない曲があるのはレーベル各社が悪い」として某S○NYを訴えると。これだ、これが一番だ。w
投稿者: ei | 2007年04月05日 00:06
いまや、著作権保護が業界の利権保護の道具と化してしまった。こんな理不尽な構図がいつまでも続くわけないですよね。
国の選挙と同じで、世の中を動かすのは消費者一人ひとりにかかっていいると思います。今回、そのきっかけを「みんなに与えてくれた」そう感じてます。
投稿者: coconut | 2007年04月05日 12:41
「著作権保護が利権保護の道具と化した」、正に言われる通りですね。それは音楽のみならず、著作権ビジネスすべてに言えることでしょう。
我々は普段から声を上げていかなければと思っているのだけど、日本という国は「お上の意向」ってのに昔から弱い。声を上げても無駄って思ってることも事実で。もっと我々の声を聞いて欲しいなと思うけど、そんなことは出来ないんだろうなぁ、自分たちの既得権益を守ることが大事な人たちにとっては。
誰のための音楽か、それをJobsはよくわかっていると思います。というか、音楽で儲けちゃいかんよと。だからiPodで儲けてるわけで、そこはAppleの上手い戦略だなとも。(笑)
投稿者: ei | 2007年04月05日 14:41
「音楽でもうけちゃいかん」って言う人がいるけど、ミュージシャンはどうやって喰っていけば良いの?
物書きはどうやって喰っていけば良いの?
両方と著作権やら版権やらいろんな権利で喰っているんだけど。
この先は、どうなるかというとパソコンやiPod等に課金されますよ。
携帯電話やHDRにも。下手すると、TVやラジオにも。
「私的録音保証金制度」として。もう、誰も文句言えません。
投稿者: ごめんね。 | 2007年04月06日 01:52
音楽で儲けることは構わないというか、儲けてもらわないと困ります。我々はアーティストにちゃんとお金を払いたいと思っています。問題はそれを中間搾取している人たち、著作権ビジネスな人たちですね。
私的録音補償金制度、悪の七団体は最初から導入ありきで話をしていますから驚きません。最初の導入はパブコメとかハード業界の思惑で止まりました。もう一度力を集めなければなりませんね。
投稿者: ei | 2007年04月06日 02:21